夢の独立開業を果たしたパン店オーナー、石田さんの学校選び、仕事に対する思いとは。

はたらきながら学べるスクール選びなら
就職・転職へのヒントはここにあります

13 石田 康子さん

地元・川口に「ほっぺたが両方落ちるくらいのおいしいパンをつくろう」と、2007年に『Bakery Kitchen hoppe*hoppe』をオープン。石田さんが、高校生の頃からの夢を実現するに至ったプロセスや、これからの目標、そしてお客さまへの思いに迫ります。

|なぜパンの道に?|

開発の仕事で「パンの面白さ」に目覚めました。

 

高校生のときから、漠然と食品関係に進みたいと考えていました。子どもみたいな発想ですが「将来はカフェとか、自分でお店をやりたいな」と。そこで、食物のことや栄養のことなどを勉強したいなと思い、まず短大の栄養科に入学して、栄養士の資格を取りました。その後、最初に就職した先が製菓製パンで使うチョコレートやマーガリン、生クリームなどの食品材料を取り扱う会社で、研究とか商品開発の仕事をさせてもらいました。新商品開発のために、さまざまなお菓子やパンをつくっていたのですが、そこでパンづくりの面白さに目覚めました。出来上がりまでの工程の繊細さや形の変化、味わいや香りとか。それで「本格的にパンの道に進みたいな」と思うようになり、入社5年目のときに、学校に行ってもっとちゃんと勉強しよう」と決めました。

|学校選びについて|

歴史と就職率の高さ、機材の充実度で。


大前提は「働きながら通いやすい」学校。親のことが心配でしたし、「これからお店をやるぞ」という目標のためにお金を貯めながら通うことを考えると、家を出るっていう選択肢はありませんでした。東京製菓学校に決めたのは、歴史があるぶん業界のネットワークがあって就職率が高いことと、オーブンなど機材の種類が多く、ほかの学校よりも環境が充実しているなと感じたから。あと、ヨーロッパに修学旅行で行けるというのも魅力でした。「将来自分でお店をやるためには、この学校だな」って納得して入学しました。あと、入学を決めてからですが、学校の雰囲気を見ておこうと思って『菓子祭*』は見に行きました。すごくたくさんお客さんが来ていて、活気があったことを覚えています。

*菓子祭:毎年冬に開催される東京製菓学校の一大イベント。

|学校について|

クラスメートは自分の大切な引き出し。


入学前はやっぱり「いまの仕事を辞めて、本当にパンの道でやっていけるか」という不安はありましたから、「ちゃんと勉強して、とにかく手に職をつけよう」という思いは強かったです。だから、実習はもっとやりたいくらいでした。あっという間に2年間が過ぎちゃった感じです。クラスメートもみんな働きながら通っていたので、いろいろな職場の話が聞けたのは、いま思うと勉強になったなと。パン屋さんの人、ホテルの人、初心者の人もいれば、経験者もいる。家族経営のお店の雰囲気だったり、ホテルの雰囲気だったり、天然酵母のお店や繁盛店とか、みんなやり方が違うんです。それだけじゃなく、電気系とか医療関係とか普通の会社の方もいて、本当にいろんな話をしました。でも、忙しいなか自ら進んで勉強に来てる人たちばっかりだから、しゃべっていても手はしっかり動かして(笑)。アットホームな雰囲気でリラックスして臨みつつ、授業の密度は濃かったのかなと思います。
 


当時のクラスメートたちとはいまでも連絡を取り合っていて、自分の大切な引き出しのひとつです。私と同じようにお店を構えている友だちも多いので、いろいろな情報交換をしています。夏休みに学校が開催してくれる『校友会特別講習会*』でも会ったりとか。何回か出ていますが、だいたい同期の友だちが誰かしらいますね(笑)。

*校友会特別講習会:卒業生を対象に、毎年夏に開催される特別講習会。同窓生たちが旧交を温める機会にもなっています。

|アルバイト〜就職|

いろいろな経験が、あとで活きた。

在学当時、昼間はカフェとかパン屋さんでバイトしていました。時間がもったいないので、行動範囲を地元に絞って自分で探してデパ地下で働いていましたが、1年生のとき、学校の掲示板で地元の有名店の募集があって、そこでのバイトに移りました。1年目はレジとかサンドイッチづくりなど、2年目からパン製造の現場にも入れてもらえるようになりました。学校で習ったこと、現場ならではのこと、その両方を経験できたのは違いも含めて勉強になりましたね。
 


そして就職も、バイトしていたそのパン屋さんに入れていただきました。卒業後1-2年そこで働いていましたが、あるときに元いた材料メーカーの会社の方に声をかけてもらって。「パン専属の開発助手が足りないから、戻ってきてやってみないか」と。ありがたくお話をお受けして、開発助手としてさまざまな案件に携わらせていただきました。有名店や繁盛店のお手伝いや新規開店のヘルプをさせてもらったり、販売も製造も経験があることを認められて、その会社のつてでお客さまだったお店で年間契約で働いたり、で、また戻ったり(笑)。この開発の仕事を通じて、たくさんのご縁に恵まれ、本当にさまざまな経験させてもらいました。それらがすべて、いまに活きていると思います。

|独立への準備|

少しずつ、できることから。

 

開発の仕事に従事しながらも、先輩や友だちがお店をオープンする度に声をかけてもらって、いろいろお手伝いに行っていた頃に「そろそろ独立かな」と思い始めました。専門学校を卒業して、6年ほど経ったときでした。それからはパンの型とかトレイとか、道具を買い揃えることから準備を進めていきました。友だちや仕事先の人に「これ要らないなら、譲ってくれませんか?」とか聞いちゃって(笑)、本当に少しずつ。あとは元の会社や仕事先の方にも協力してもらい、オーブンやミキサーなどの機材を試験的に使いながら選ばせてもらったり、いくつかの繁盛店に入れてもらって、日々の仕事の進め方や工場のレイアウトなどを勉強させてもらったりもしました。
 


地元で小さなお店から始めようと決めていたので、効率やお店のサイズに合った機材選びなどは慎重にやりました。1年近くかけて、少しずつ、できることから準備を進めていった感じです。家族のことも考え、地元でお店をと決めていましたが「川口の新井宿ってどこ?」「何があるの?」って言われることが多かったので、お店を構えて良いこと探しもしたかったし、何にもないなら自分がつくるぞっていう思いもありましたね。

|お店への思い|

「こだわらない」が「こだわり」。


ただ、何より大切にしたいと思うのは、私の個性より、“お客さまの個性”。「小さいお子さんがいらっしゃるご家庭はこうじゃないか」とか「お年寄りの方はこうじゃないか」とか、「自分がやりたいパンよりも、お客さまが食べたいパンは何だろう?」ってずっと考えてきました。
 

お客さまは時間帯や曜日でだいぶ違います。昼間は地元のお年寄りや主婦の方々、夕方になると学校や部活帰りの中高生、さいたま高速鉄道の新井宿駅からすぐ近くなので、夜は通勤帰りのOLさんや会社員の方々が来てくれます。もともとここが地元で、近くにパン屋さんが少ないので、地域に根ざしたさまざまなパンを提供したいと考えて、レシピも構成しています。昼間は食パンなどのほかに惣菜パンやヘルシー志向のパン、夕方以降にもバゲットなどのハード系も用意します。六本木とか都心へのアクセスも良い場所なので、食にこだわりのある人も少なくありません。
 


小さなお店ですけど「できることをできるだけ」。新しいレシピとかも、いろんなことを合間を見つけてはちょっと試行錯誤して、という毎日。欲張りではあるんですけど、一人でも多くのお客さまに喜んで欲しいな、と思って仕事をしています。
 

お店のこだわりってよく聞かれるんですけど、ホントないんです。「自分はこういうスタイルなんだ」とか、あまりこだわってないです。お店に来たお客さまが、シンプルにうちのパンを楽しんでくれて、パンの豊かさや幅広さを感じてくれれば十分。パン屋って暮らしを支える仕事だから「お客さまが喜んでくれるならそれでいい」って思ってやってます。そういう謙虚な感じ? で仕事をするのが好きですね。

|仕事の喜び|

続けてきて「少しずつ見えてきた」もの。

新井宿って、川口の真ん中にあるのに街外れ的な感じなんです(苦笑)。企業とかないですし、農家が多い土地柄。それでも「食べたくなって来ました」とか「なかなか来れなくってごめんなさい」って言われたりすると、「来てくれてありがとうございます」って、心から思います。親子三代で来てくださる方や、子どものときに来てくださった方が大人になって子供連れでまたお越しになるとか、お亡くなりになられたお年寄りのご家族が「ここのパンがお気に入りだったんですよ」と言って買って帰ってくださったり。こういうのって、続けてきたことで初めて分かったことです。暮らしを支えてきたんだな、誰かの人生に少しでも関われたのかな、って思います。
 


自分で言うのは恥ずかしいんですが、やたらベタ褒めされることもあって(笑)。ここに来たくて来た、というお客さまのなかには「何を食べても美味しい」「パンの生地がそもそも美味しい」と言ってくださる方もいらっしゃいます。パン屋としての基本なので当然なのかもしれませんが、やっぱり嬉しいですね、そう言っていただけると。

|これからの目標|

パンを「ゆっくり楽しめる」場所に。

 

2007年にオープンしたので、2017年の6月でちょうど10周年。あっという間で、まだまだやりたいことだらけです。小さなお店ですが、将来は「焼きたてのパンがその場で食べられる」イートインのスペースが欲しいです。わざわざここまで体力を使って足を運んできてくれたおじいちゃんやおばあちゃんやお子さんが、ゆっくりくつろいでパンを楽しめる場所が欲しいなと思ってます。そして、ゆくゆくは「新井宿ってどんなところ?」って聞かれたときに、みんなに「hoppe*hoppeっていう美味しいパン屋さんがあるよ」って言ってもらえたら…最高です(笑)。

|パンの道を考える人へ|

やりたい仕事に就ける、喜び。

いきなり大きな話になっちゃいますけど、日本のパンってすごく幅広いんです。例えば、おにぎりってすごくシンプルな食べ物じゃないですか? でも、その具が変わることで、たくさんのバリエーションができちゃう。日本人の持ってる「編集する力」ってすごいと思うんです。それは、パンの世界でも同じ。ヨーロッパ系の本格的なハードパンから昭和のにおいのする懐かしいパン、惣菜パンや天然酵母やその他いろいろ、日本で売られてるパンって本当にたくさんのバリエーションがあって、楽しいんです。だから、好きな人にはぜひパンの道に進んでもらいたいな、と思います。
 


ただ、遊びじゃないので、職業として、生活を支えるものとして、それなりの覚悟を持ってやるべきかなと。誰でも夢はありますけど、「実際になりたい仕事に就ける人」って、ほんのひと握り。私はたまたま好きな仕事に就けていますが、昔お世話になった先生に「一番大切なのは “覚悟” だよ」と言われたことを、最近よく思い出すんです。最後は「この仕事で食べていくんだ」「来た人に喜んでもらうんだ」っていう気持ちが、一番大切じゃないかなって思いますね。

Bakery Kitchen hoppe*hoppe

地元・川口に「ほっぺたが両方落ちるくらいのおいしいパンをつくろう」と、2007年にオープン。地元はもちろん、遠方からも買いに来るお客さま多数の「小さいけれど人気」のパン店です。



~石田さんのオススメのパン~

○ほっぺぱん:ふわふわの食感は、まるで赤ちゃんのほっぺた。そのままでもサンドイッチにしても、生地の美味しさが味わえる逸品。

○らーゆラスク:お酒のおつまみにもオススメの、人気のラスク。



埼玉県川口市西新井宿南原103-4

048-286-5733

10:30~20:00(土のみ9:00〜18:00)

定休日:日・月





卒業生の本音に迫る!
東京製菓学校オフィシャルサイト
ページトップへ