大田区・南蒲田のパン屋さん、ミモレット。 “街の繁盛店” を生んだ片山さんの思いとは。

はたらきながら学べるスクール選びなら
就職・転職へのヒントはここにあります

08 片山 明彦さん

家族と二人三脚、南蒲田でパン屋さんを営む、片山さん。専門学校で学んだことや得たものを活かし “地域の名店” をつくりあげています。『おおたの逸品』に選ばれた『蒲田あげぱん』などのヒット商品、商店街のお店とのコラボ商品を続々と世に送り出す、片山さんの思いを紐解きます。
|パン業界をめざすきっかけ|

パンの学校に通う高校の先輩の話に引き込まれて。

高3になって「どんな学校に進もうか」とずっと考えながらも、なかなか決められずにいた秋のこと。高校で開かれた進路説明会で、パンの専門学校に通う卒業生の話を聞く機会があったんです。その方が、とても楽しそうに、活き活きとパンづくりを学んでいる自分のことを話していて。あまりに楽しそうなので、どんどん話に引き込まれまして(笑)。

それで「よし、自分もこの道に進むぞ」と思い立ったんです。決めてからの動きは早かったですね。いろいろ学校を調べて、一番良いと思ったところに、迷うことなく10月に願書を出しました。
|学校選びのポイント|

歴史のある伝統校なら安心だと思いました。

学校選びは、親の負担を少しでも軽くなるように、自分でも学費を捻出しようと「働きながら夜に通える」学校を探していました。そこで目にとまったのが、東京製菓学校。いろいろ調べてみると、夜間部があって、パンだけを専門的に学べる。しかもよくあるパン教室とかではなく、歴史のある専門学校だった。伝統があって、卒業生も多いなら安心だなと思いました。また、交通の便も良く自宅から通えるのも魅力でした。
|学校で学んだこと|

パンづくりのベースは、すべて教わりました。

入学して、昼間の仕事は1年目はパンとは違うアルバイト、2年目になって自宅から通えるパン屋さんで働きながら学校に通いました。1年目の授業は、基本のパンを少し配合を変えたりしながら、とにかく何度もくり返しつくりました。実習を通じてみっちりと基礎をやったぶん、いまも仕事のときに応用が効くんです。「どうすれば、どんなパンができるのか」。化学的なことも含めて、失敗も成功もくり返し体験しているので、知っているかそうでないか、という部分での経験値や知見がまったく違う。そこがいまに活きている大きな部分だと思います。いまの僕のパンづくりのベースは、すべて学校で教わったことだと言っても過言ではありません。
|学校で得た財産-1|

学生時代の仲間は、かけがえのない財産。

クラスでは、自分と同じ高卒の人から50代の人など年齢はさまざま、大学生や広告代理店に勤めている会社員とか、いろいろな人と話をすることで、社会勉強にもなりました。知らなかったいろいろな仕事のことなども教えてもらえましたね。みんな仲が良かったせいか、週3回の授業の後は、ほとんどそのままクラスメートとご飯食べに行ってました(笑)。いつも一緒につるんでいる仲間が10人くらいはいましたね。その仲間たちとはいまも付き合いが続いていて、僕より先に独立開業した友人も。開店準備のとき、相談に乗ってもらっただけでなく、オープン時には手伝いにも来てくれました。お互いにいろいろ情報交換をしていますし、忙しくて人手が足りないときは電話一本で駆けつけてくれます。「いまさ、じつはすごい忙しいんだけど…」と言うだけでこちらの意図を感じてくれるので、話が早いし、一緒に勉強してきて持っている技術も分かっているので、安心してお願いできます。本当に感謝しきりです。
|学校で得た財産-2|

学んだ知識が、商品開発に活きている。

フランスから先生が来て、教えてくれた授業は印象深いです。いわゆるハード系のパンは学校に入るまで食べたことがなかったので、新鮮でしたし、とても勉強になりました。そのときにつくったパンで『リュスティック』というのがあるんですが、あまりにおいしかったので、いまもお店の定番ラインナップに入れています。趣味が高じて、リュスティックを使ったサンドウィッチもつくっています。

リュスティックを使った『気まぐれカスクート』

あとは、ノート。授業時にメモした内容をあとで清書し直して、きちんと残してあるんです。ホント大変な作業だったので、何度もやめようかと思いましたが、僕のパンづくりの『バイブル』になっています。いまも本当によく見直します。パンについての歴史とか、さまざまな情報をまとめてあるので、プライスカードなどを書くときにも活かせて、重宝しています。我ながら良く頑張ったなと、自分を褒めたい気分です(笑)。
|独立までのプロセス|

異なるお店で、さまざまな環境を経験。

卒業後は、個人店で4年働きましたが、規模の大きなお店も経験したかったのでフランスの大手パン店でも修業。でも最終的にまた初めのお店に戻り、独立するまでの8年間お世話になりました。最後の3年間は店長としてお店を切り盛りさせてもらいました。責任ある立場になるとプレッシャーもきついですし、ホールセールも多かったので大変でしたけど、その経験は、いまにして思えば何物にも代え難い財産だったと思います。さまざまな環境を経験できたことは、確実にいまに活きています。
|夢の実現・独立開店|

34歳で独立開店。夢がひとつ叶いました。

独立は僕にとってのひとつのゴールでした。「30歳までに自分のお店を持ちたい」と思って頑張ってきて、実際は少しだけ延びましたが、34歳で独立開業できました。お店のある南蒲田は、小さな子どものいる家族連れや年配の方だけでなく、大きなオフィスビルもある関係でビジネスマンやOLも少なくありません。

幅広い年齢層の方にパンのおいしさをいろいろ楽しんでもらいたいという思いがあるので、少しでもたくさん商品を並べたくて、ひっきりなしにパンを焼いています。この間数えてみたら…150アイテムくらいありました(笑)。最初は、商品構成も悩みました。「下町だから菓子パンとかソフトなパンをメインにしたほうがいいかな」と思ってはじめたんですが、予想以上にハード系のパンも受け入れられて、いまは商品構成のうち30%がハード系になっています。お店の人気商品のひとつ『ミルクフランス』が口コミでヒットしたことも大きかったです。
|いましたいこと、これからのこと|

商店街を盛り上げる存在になりたい。

最近力を入れているのは、地元の商店街との “コラボ” パン。30-40年ほど前の写真を見ると、当時の賑わいってなかなかのものなんです。大型店や郊外店舗がどんどん増えて、商店街はさびしい感じになっていますが、自分の力で少しでも賑わいをつくりたいと思っているんです。

というか、商店街にあるお店って、どこでもモノづくりがしっかりしているんです。お豆腐ひとつとっても、お肉屋さんの惣菜でも、手を抜かず、心を込めて美味しくつくろうって頑張っている。実際に食べても本当に美味しいですし「これを活かさない手はないな」っていうことで。ローカルのものを活かした『この街だけのオリジナル』を一緒につくりあげていくのって、すごく楽しいですし、自分が楽しんでつくっているぶん、相手も本気になってくれるし、お客さんにもそれが伝わると思うんです。商店街の国産大豆100%の豆腐を使った『豆腐ハンバーグサンド』や、お肉屋店さんの岩手産「あべどり」を使用した『自家製チキンカツサンド』『塩鶏の柚こしょうマヨサンド』、合挽き肉を使った『カレーパン』など、ヒット商品がどんどん出ています。
また、これからはハロウィンのパレードとか、商店街をあげて取り組むイベントのプロデュースにも積極的に関わっていきたいなと。街のなかでも自分は若手の部類。だからこそ盛り上げていかないと、って思っています。
|家族とお店をやる喜び|

家庭的なあったかい雰囲気づくりを。

お店を開いて3年半ほど経ちましたが、毎日、自分の店で好きなパンをつくれることが、本当にうれしくてたまりません。家族には「働き過ぎじゃないの?」と言われたりもしますが、大好きなパンに触れていられることが楽しくてしかたがないんです。じつは奥さんもパン専科の同級生。僕のパンやお店への情熱を理解してくれているので、仕事でも家庭でも、すごく助けられています。また、私たち二人の両親とも、お店を構えることに理解があったこともありがたかったです。実際、いまはお店を手伝ってくれています。おかげでお店の空気が家庭的なあったかい雰囲気になっていることも、うれしいことです。

奥さま・佐知子さんの想い
私は主に売り場を担当しながら、パンづくりのサポートもするという感じ。日ごろから、のんびりと商品を選んでもらえる居心地のよい空間づくりを心がけています。

専門学校でも同級生だった明彦さんと佐知子さん

ご近所の常連さんも多いので、楽しく会話できるよう、コミュニケーションにも気を配っています。また、あえて手書きにしているチラシやブログなど、ちょっとした暮らしの情報を発信したり、ご縁があってお付き合いしている信州の自家菜園でつくった有機栽培の野菜も販売したり、友だちとコラボした手づくり廃油せっけんなどの雑貨もご紹介したりしています。主人はもちろんですが、家族やスタッフと一緒に楽しみながら、心あたたまるお店にしていきたいと思います。
ブーランジェリーミモレット

南蒲田・日の出銀座商店街にある、街のパン屋さん。天然塩・素焚糖(さとうきび)など自然の素材にこだわり、余計なものを使わずに、誠実な手づくりがモットー。クリームやジャム、カレーパンの具やサンドイッチの具もほぼ自家製。定番の人気商品『ミルクフランス』や、『おおたの逸品』に選ばれた『蒲田あげぱん』など、さまざまなヒット商品も生み出しています。

~片山さんオススメのパン~

○ミルクフランス:人気No.1の定番商品。この波及効果でハード系のパンも売れているのだとか。

○蒲田あげぱん:区長さんとの何気ない会話から生まれたヒット商品。大田区発祥の揚げパンをふんわり口溶けよくアレンジ。『おおたの逸品』にも選ばれています。


東京都大田区南蒲田2-8-11

JR蒲田駅から徒歩10分

京急糀谷駅から徒歩8分

ホームページ

http://www.geocities.jp/kaz11413/mimolette/





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